HOME > 診療内容 > 下肢静脈瘤
心臓から足先へ行った血液は再び心臓へ戻りますが、人が立った状態で足先と心臓には1m位の高さの差があります。
血液は液体ですから、自然には下から上へ重力に逆らって流れることはありません。
足先の血液は、図のように静脈の弁とふくらはぎの筋肉が協調することにより、心臓へ戻っていくのです。
ふくらはぎの筋肉が静脈を圧迫すると中の血液は上か下へ押し流されますが、静脈内の弁の働きで下へは行かずに上へ昇り心臓に戻るのです。
この弁が機能しなくなった状態が静脈瘤です。血液が順繰りに上へ昇っていけなくなり、血管内に貯まって静脈が瘤状に膨らみ静脈瘤となります。
静脈瘤のある方は、ためしに横になって脚を挙げてみてください。そうすると今まであった瘤状の膨らみはなくなります。
脚を挙げて心臓より高くすれば、足先の血液は弁が機能しなくても重力により自然に心臓へ戻るためです。
しかし立った状態では弁が働かないと足先の血液は心臓へ戻れず、血管内に溜まり静脈瘤になるのです。
静脈瘤とは脚の静脈の弁が機能せず、血液が逆流して血管内に貯まって瘤状になったものなのです。
脚に、水が入った風船をぶらさげた状態を想像してみてください。脚が重たくなりますよね。
典型的な静脈瘤の症状として、長時間立っている時に、脚がだるい、重い、痛い、張る、むくむなどがあります。また夜間寝ているときに脚がつりやすくなります。
皮膚が赤黒く、かゆくなり(色素沈着)、進行すると皮膚潰瘍を形成することもあります。皮膚科へ通ってもなかなか治らない皮膚炎が、静脈瘤によるものであることも多いのです。
また静脈瘤の中で血が固まると、血栓性静脈炎をおこします。柔らかかった静脈瘤が固く、押してもへこまなくなり、赤く腫れて痛くなります。
おもしろいことに、瘤の大きさと症状の程度には、あまり相関はありません。大きな静脈瘤が脚全体にあるような方でも、症状がほとんどないことがあります。
一方で外見上はほとんど瘤がわからない方でも、脚がだるい、痛い、むくむなどの症状があり、調べてみると静脈の弁不全があることも少なくありません。
下肢静脈瘤により
潰瘍がおこることがあります
静脈瘤を治すと
潰瘍も治ります
下肢静脈瘤による色素沈着
血栓性静脈炎をおこすと、
静脈瘤が赤く腫れて痛くなります
静脈瘤による症状は基本的に、長時間立っているときにおこります。
朝起きたときには何でもないのに、一日中立ち仕事をして夕方になると脚がだるい、重い、痛いというのが特徴的な症状です。また休憩の時に、脚を挙げて休むと楽になります。
これとは逆に昼間は何ともないのに夜間寝ているときに脚が痛いというのは、まず静脈瘤の症状ではありません。
しかしなかには診断に迷うようなことがあります。一人の方に座骨神経痛と膝の関節炎、下肢静脈瘤が同時にあるような場合、
その方の脚の症状のうち静脈瘤がどの程度の割合を占めているのか、判断が難しいことがあります。そのような場合には、試しに圧迫ストッキングをはいていただきます。
圧迫ストッキング着用により下肢静脈瘤の症状は良くなりますが、座骨神経痛や膝関節炎の症状は変わりません。
ストッキングをはいて良くなった分が静脈瘤による症状ということになります。
静脈瘤患者の8割以上が女性で、妊娠、出産を契機に静脈瘤ができたり、ひどくなったりすることが多いです。 男性では、長時間立ち仕事をされている方にできやすい傾向があります。また遺伝的に静脈瘤になりやすい体質があり、家族内で発症しやすいのはこのためです。
脚の血液はおなかを通って心臓へ戻りますが、妊娠中におなかが大きくなると腹部の血管が圧迫され血液が戻りにくくなります。 その結果、脚の静脈が拡張して弁不全がおこり、静脈瘤になります。また妊娠女性の体内のホルモン変化により、血管が柔らかく広がりやすくなり、 弁不全がおこりやすくなると考えられています。出産後に良くなることが多いですが、妊娠出産を繰り返すと、元に戻らず悪化していきます。
静脈瘤の治療を要するのは以下の場合です。
静脈瘤があっても上記2つに当てはまらないのであれば、治療せず経過観察でもかまいません。
静脈瘤の治療は以下の4つです。

静脈瘤用の特殊なストッキング(弾性ストッキング、圧迫ストッキング)で脚を圧迫して、静脈のうっ血や逆流を防ぐ治療法です。
足先を強く、足の付け根を弱く圧迫します。かなりきついストッキングですので、慣れるまでは履くのが大変です。履きやすくする補助器具もありますので、ご相談ください。
今まで夕方になると脚がだるくなっていた方でも、これを履けば楽に立ち仕事ができるようになります。
自分で履くだけなので、簡単にできるのが利点ですが、生地が厚めなため暑い季節には少しつらいかもしれません。
効果は弾性ストッキングをはいている間だけで、脱いでしまえば元にもどってしまいます。10日間履いていれば静脈瘤が消えてしまう、ということはありません。
そのため、立ち仕事を始める前に履き、仕事が終わったら脱ぐ、という使い方をしてください。夜寝ているときに履いていても、効果はありません。
また使っている内に伸びてきますので、約半年おきに買い替えていただく必要があります。病院でサイズや、圧迫圧を決めてもらって、脚に合うストッキングを着用することが大切です。
きつくないと効果はありませんが、きつすぎると危険なことがありますし、そもそも苦しくて履き続けられません。

血管内に硬化剤を注射し、圧迫して静脈瘤を癒着、硬化させる方法です。比較的簡単に5分から10分間ほどでおこなえます。
注射ですので傷跡は残らず、美容的にも優れた方法です。
しかし大きな静脈瘤には効果がありません。また再発(一度静脈瘤が消えてなくなっても、しばらくしてまた膨らんでくる)が、手術に比べて多いのが欠点です。
色素沈着(血管にそって皮膚が黒ずむ)や血栓形成(血管内で血が固まり炎症をおこす)などの合併症をおこすこともあります。
手術には高位結紮とストリッピング(静脈抜去)があります。

高位とは脚の高い所(脚の付け根)で、結紮とは血管をしばることです。 浅在静脈の弁不全のため血液が逆流して静脈瘤になっているので、この静脈を根部(深部静脈との合流部)でしばると逆流がなくなり静脈瘤は消えます。 局所麻酔下に脚の付け根を2cmほど切るだけですむため簡単にできますが、再発率が80%と高いことが欠点です。 手術してしばらくすると、今まで糸のように細かった血管が広がってバイパスとなり、ここを通って再び逆流がおこるため再発しやすいのです。

高位結紮は再発率が高いため、より再発の少ない手術として従来行われていたのがストリッピングです。この手術は鼡径部から膝下まで浅在静脈を抜き取ってしまいます。 鼡径部と膝下の2カ所で皮膚を1—2cmほど切り、浅在静脈内にワイヤー状の特殊な道具を入れて、血管を抜き取ってしまいます。 高位結紮で問題となったバイパスがつながる先の血管を抜き取ってしまうために、再発がおこる可能性は10%以下となります。 欠点は血管を抜き取る際に、その血管の枝を引きちぎりながら抜くため出血することです。 抜き取った後すぐ圧迫止血をしたり、血管を収縮させる薬を使ったりしますが、ある程度の出血は避けられません。 また抜き取る血管の近くに神経があると、その神経を巻き込んで一緒に引きちぎってしまうことがあります。そうなると脚のしびれや痛みが術後に残ってしまいます。

ストリッピング手術の合併症である出血や神経損傷を少なくしようと開発されたのがレーザー治療です。
血管内にレーザーのファイバーを挿入し、内側からレーザーを照射して血管を収縮、閉塞させます。血管を内側から焼くだけでちぎりませんから、出血はわずかです。
またレーザーは血管の外には影響しないため、近くにある神経を損傷するリスクも少ないのです。再発率は10%以下です。
レーザーファイバーを挿入するための傷は1mm程度です。また手術時間も30分ほどですみ、従来のストリッピング手術(約1時間)の半分です。
平成23年1月から保険適応になったため、金銭的な負担も少なく治療を受けていただけるようになりました。
脚の血液の大部分は、深部静脈を介して心臓に戻っていきます。静脈瘤の治療では弁不全をおこして現在働いていない浅在静脈を潰すものです。 深部静脈は温存するため、血流に障害は起こらずに、脚全体の血流はかえってよくなります。 例えていうと、首都高速が渋滞した時に入り口を閉鎖することにより、高速と一般道の両方の渋滞を解消できるのと同じ原理です。
確かに理論的には浅在静脈の弁を治せば、静脈瘤は良くなるはずです。しかし実際に弁を治す手術では時間もかかり、傷も大きくなります。 入院も必要になるなどあまりメリットはありません。深部静脈の弁不全の場合には、弁を治す手術や弁を移植する手術がおこなわれています。
既にできてしまった静脈瘤を治す薬や、食べ物、運動、マッサージはありません。これは静脈瘤の原因が弁不全であることから明らかです。
太りすぎないこと、適度な下肢の運動、立ち仕事や妊娠中の圧迫ストッキング着用などがあります。
しかし体質的な要素も多く、また人は立って(脚を下にして)生活しているため、これさえ注意すれば静脈瘤にならないという決め手はありません。
まれに下肢静脈瘤が破れて、大量出血してしまうことがあります。そのような場合には
ことで簡単に止血できます。
最初にエコノミークラス症候群について説明いたします。飛行機の狭い座席に長時間座って、海外旅行へ行くことがあります。
座ってリラックスした状態ではふくらはぎの筋肉は休んでおり、血管を圧迫しません。
そのため足先から心臓へ戻る血液の流れは非常にゆっくりとしたものになり、下肢の深部静脈内に血栓ができてしまうことがあります。
その血栓が剥がれて飛んで肺の血管に詰まってしまい、肺に血液が流れなくなった状態を肺塞栓症またはエコノミークラス症候群といいます。
こうなると酸素を取り込めなくなるため、死につながることもあります。
下肢静脈瘤がある人とない人を比べると、静脈瘤がある人の方がエコノミークラス症候群をおこしやすいのです。
しかし静脈瘤を治療して治したら、もうエコノミークラス症候群は心配しなくて良くなる訳ではありません。静脈瘤がない人でもエコノミークラス症候群はおこります。
なぜならエコノミークラス症候群で問題となる血栓は、下肢の深部静脈内にできるものであるためです。
静脈瘤の治療は浅在静脈のみで深部静脈は温存するため、静脈瘤を治療しても、エコノミークラス症候群はおこりえます。
ではどうしたら良いのでしょうか?脚を動かして、ふくらはぎの筋肉を働かせてください。そうすれば筋肉が血管を圧迫し、血流が早くなります。
血管内を血液がスムースに流れていれば、血栓はできません。具体的には足の指でじゃんけんをしたり、踵の上げ下げ、ふくらはぎのマッサージなどをしていただくことが、
エコノミークラス症候群の予防になります。

妊娠中にできた静脈瘤は出産後になくなることはありますが、その他には静脈瘤が自然になくなることはありません。現状のままか、次第に悪化するかのいずれかです。
全く別の病気です。静脈瘤は下肢の静脈弁不全が原因でおこりますし、大部分の動脈瘤の原因は動脈硬化です。